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今回のご相談は、速度がまったく出ないとのことです。外国型機関車の修理では、大変難航することはよくあります。
分解していきます。
モーターを取り出します。ここからパーツを1つ1つチェックしていきます。
まずは、個別の台車を手で回して確認しましたが、まったく回りませんでした。
過去、当店で修理した外国型車両の多くは、経年劣化によるギア割れでしたが、今回は違うようです。台車を分解するにつれて車輪がポロポロ外れてきます。
車輪がグラグラしています。
ロッドにも何かが溶けた黒い塊がくっついています。
内部は油でベタベタな状態ですから、まずは洗浄して油分をすべ落とします。洗浄が終わったところで、車輪を取り出します。
よく見ると、動輪内側のプラが完全に溶けて変形してます。このような症状を見るのは初めてです。その他の動輪も同様の状態でした。
見たところ、完全に熱変形してますから、不具合が出た際に、無理にパワー長時間かけすぎた結果だと思われます。
多くの方は経験したことはないと思いますが、コントローラーMAX状態で、モーター停止状態ですと抵抗となる部分を触るとやけどするレベルまで熱くなります。
車両走行中にモーター車が止まることは少なくありません。要因はいくつかありますが、動力車が動かなくなった場合は、速やかにパワーをゼロにして、車両を確認する必要がございます。ここでやってはいけないことは、コントローラーのパワーを全開まで上げたり、車体を上から叩いたりしないでください。この方法は一時的に動くかもしれませんが、根本的な解決とはなりません。
写真からもおわかりいただける通り、車輪内側のパーツが形状がわからないくらい変形してます。
この黒い塊が車輪です。
すべて分解してギア部分と車輪外側のパーツを取り出します。
まずは、損傷したパーツを作らなくては始まりませんので、部品の設計から行います。
かなり変形はしているものの、あるていど形状を保っていたパーツを取り出し、スキャンします。
パーツ設計にあたり、正確なデータを得るためにノギスで寸法を測ります。
3Dデータ設計にあたり、必要なデータは揃いました。
外形サイズ:8.0mm/内径1.5mm(軸径)/ロッドピン:1.4mm/原点から+2mm
分解したのいいけでも、細かい部品が多く組み戻すのが大変である。
3Dデータを作ります。
油分を完全に取り除くため、脱脂剤に付け込んでおきます。
こちらもべとべとな状態です。完全に洗浄したあと3Dプリント出力されたパーツを実際にはめ込んでみます。
設計通りぴったりです。反対側は45度傾けた位置で固定します。最終的な調整は動輪を組み込んだあとに行います。
そしてこちらが、原形を留めないほど溶けて塊となっていた部品です。どうしたらこのようになるのか本当に不思議です。さすがに修理にあまりにも時間をかけすぎてしまっている感じです。まだ直さなくてはならない個所と各種の調整がまだまだあります。
出来上がった部品をはめ込み、エアーブラシで艶消し黒で塗装します。
塗装します。
ここからの各部の調整が本当に大変なんですよ。
各動輪がしっかりリンクして車輪が回るようになりました。
さらに片台車の集電機構も完全に失われている状況でしたので、真鍮線を加工して組み込みました。
やうやくテスト走行まで持ち込みました。
まずは、1回目の走行テストをどうにかパスしました。このあと連続した走行を30分程度行い、最終調整へと移ります。
ヘッドライトもフィラメントが焼き切れているらしく不点灯のようですので、こちらも直す必要がありそうです。
損傷している電球を取り出してLEDへ置き換えます。
3mmLEDは、そのままでは入りませんので、2.5mmまでルーターで削り出します。
埋め込んで点灯テストを行います。このようになります。続いて、車体内部に抵抗とブリッジダイオードとセラミックコンデンサを配置します。こちらの機関車の仕様として、両方向でヘッドライトが点灯するようになっておりますので、そのようにいたします。
台車の上部に回路を配置していきます。
ライトの点灯確認を行います。OKです。
ボディーを被せて往復走行とライトの明るさなどを確認します。
作業はようやく完了でございます。今回の作業は、かなり難しかったです。途中、泥沼にはまって時間ばかりすぎる日々が長く続きましたが、どうにか走行できるところまで復活できました。ただし、このモーターは熱を結構持ちますので、パワーの掛けすぎには充分注意が必要ですね。